| |||||||
![]() |
||||
2002年 新年号 <Vol.32> |
||||
■労働運動への新たな期待 |
||||
| 経済のグローバル化が進み企業競争が激化する中で、失業と不安定雇用が世界共通の間題となっている。わが国でも、失業率は5%を超え過去最高の水準になっているが、政府は構造改革によるさらなる失業増を容認している。市場原理をこのまま放置すれば、強者をますます有利にし弱者をどんどん脇へ追いやるような社会が生み出される。多国籍企業が「白由」にコストを削減し、より多くの収益をあげる一方で、労働者は一方的に労働条件を切り下げられ職を奪われる。このような流れはどこかで断ち切らねばなるまい。経済的発展は、人間にとって有益で人間が確実に受容しうるものでなければならない。労働運動の側では、「労働者は機械でも商品でもない」という原点に立ちつつ、新たな社会状況に対する明確なビジョンをもって、無慈悲無限定なリストラを押し戻す「闘い」を強めていく必要があろう。 これからの世の中が企業中心のものとなるか、労働者・国民中心のものになるかは、今後の労働運動の新たな展開にかかっているといえるだろう。 |
||||
| 今村 幸次郎 | ||||
■報復戦争と自衛隊派遣に反対 |
||||
| 今回の対米テロ行為は許すべからざる暴挙である。しかしこれに対する軍事報復としてのアフガニスタン攻撃は決して容認できるものではない。今日において戦争は既に国際法上違法化されている。 これは19世紀末以来2度の世界戦争の惨禍を経て、人類が到達した国際法上の大原則である。国連憲章は国際紛争の平和的解決の原則をうたっている。憲章上武カ行使が許容されるのは51条により認められる自衛権行使の場合と、国連安保理により集団的安全保障としての軍事的強制措置がとられる場合だけである。しかも自衛権の行使は安保理が必要な措置をとるまでの問に限られている。つまり自衛権の行使はごく限定された場面で例外的にしか認められていない。今回の軍事報復はこのいずれにも該当せず、現在の国際法上いかなる角度からみても違法である。これを許容することは時としてリンチが行われた西部劇の世界に逆戻りすることでしかない。19世紀以前的野蛮への逆行である。日本がテロ対策特別措置法により、こうした軍事報復を支援するための自衛隊海外派遣を進めようとしているのは、国際法にも憲法にも違反するものである。テロ行為への対策としては国際法廷など司法的な解決の道しかないし、そうした対症療法にとどまらないテロを惹起する原因の除去にむけた諸施策がむしろ求められている。 |
||||
| 大熊 政一 | ||||
■報復戦争−日本の戦争協力に反対する若手弁護士らの取り組み |
||||
| 平成13年10月31日、紙面の4分の1の記事(朝日新聞夕刊)から、私たちは「法律家からの呼びかけ」を行いました。 あのテロ行為に震撼した瞬間、世界中の誰もが平和を願う思いで一致したはずでした。しかしながら、米国の報復戦争やそれに追従する日本の動向は、果たして「一致した思い」に基づくものだったのでしょうか。 疑問の声もないまま、確実に「大きなうねり」へと流される不安や危惧感、そして、ここで法解釈による論理的かつ冷静な声を挙げることが、法律家の責務であるとの思いを胸に、私たち同期の弁護士は「報復戦争・日本の戦争協カに反対する法律家の会」立ち上げの運動を展開しました。「正義」を掲げた更なる法抵触行為は自己矛盾以外の何者でもなく、事実、報復は報復の連鎖をもたらし無用な混乱と被害拡大を招くばかりです。 無論テロ行為は断じて許せないとの思いは私たちも同じです。ただ、あくまで法による解決、即ち今回のテロ行為こそ、根拠に基づく容疑者特定・国際社会への協カによる犯罪者の身柄確保・人道に反する犯罪として国際法廷における厳正なる処罰をすべきであり、常設国際刑事裁判所の設置など、人道に対する罪等を裁く枠組み作りの重要性を上記新聞で訴えています。日本は米国同様、97年採択の国際刑事裁判所設置条約(ICC規程)すら未批准なのです。平和は全ての営みの「基盤」たるもの、その「基盤」作りとは本来「地味で地道」な作業であるはずです。人が劇的で即効性のあるものを求めがちなことに難しさを覚えつつも、かかる作業の積み重ねこそ、結局は終局的解決に向かうものと信じ、平和問題に取り組みます。 |
||||
| 圷 由美子 | ||||
■労働法制改悪に見る小泉内閣の素顔 | ||||
| 我が国の失業率がどんどん上昇している最中、小泉内閣がまた国民に「痛み」を押し付けようとしています。派遣労働者や有期雇用労働者を拡大し、裁量労働制(裁量みなし時間制)を拡大、さらには解雇を自由にできるようにすると言うのです。派遣や有期雇用がどんどん広がれば、1年ないし3年で職を失う危険が高く、身分の不安定な雇用労働者が増加して生活が脅かされます。また、裁量労働制というのは実際に働いた時問ではなく、予め決められた一定時間だけ働いたものとみなすというものですから、いくら働いても一定の時間分の賃金しかもらえません。さらに、不安定な有期雇用労働者だけでなく、雇用期問の定めがなく働いている労働者についても、解雇を自由にできるということになれば、日本国民の大多数を占めるサラリーマン労働者の家庭生活は、いつでも崩壊の危機に晒されるということになってしまいます。
我が国の構造改革には「痛みが伴う」と言いながら、実はその痛みは一方的に労働者だけに押し付けるものなのです。こんな不公平な政治のありようはおかしいと思います。今、小泉内閣がやろうとしている労働法制の改悪が通ってしまうと、日本の国民は回復不可能な損害を被ることになってしまいます。こんなやり方は絶対に阻止しなければ取り返しのつかない事態となります。“小泉内閣の隠された素顔”をしっかりと見極めなければなりません。 |
||||
| 棗 一郎 | ||||
■狂牛病・ヤコブ−政治の怠慢が国民の命を脅かす | ||||
| 96年、欧州でヒトヘの狂牛病感染(新変異型ヤコブ病)が大問題となったとき、政府はわざわざ調査委員会を作って日本での感染を調べたことがあります。そのとき牛からプリオン病が感染した人はいませんでしたが、輸入されたヒト乾燥硬膜を移植した人が大量にヤコブ病に感染していることがわかりました。それが今訴訟になっている薬害ヤコブ病です。 さて、政府は狂牛病対策におおわらわですが、そもそも96年4月に、WH0(世界保健機関)勧告を受けて安全対策を取っていれば狂牛病の進入は防げました。しかし、政府は対策をとらなかったどころか、今年6月、欧州委員会の日本における狂牛病発生の危険性の指摘に対し、「EU独自の基準で勝手に危ないと言われては迷惑」と抗議すらしていました。 薬害ヤコブ病も狂牛病でも政府の態度は一貫しています。それは、「大問題に発展するまでなんにもしないこと」です。薬害ヤコブ病に至っては訴訟となってからもずっと、患者への存在を否定し、責任はないと居直りつづけています。憲法は「すべての公務員は全体の奉仕者」であり、国政の「福利は国民がこれを享受する」と謳っています。憲法を遵守しない役人たちの存在は、私たちにとって命を脅かすほど有害なのです。 |
||||
| 森 真子 | ||||
|
||||
|
||||
|
||||
|
||||
|
||||
|
||||
■親会社と企業グループの「社主」個人に退職金支払義務あり! |
||||
| 企業グループの子会社の元社長と専務が、退職金と未払賃金2人合わせて約6,780万円を親会社とグループ企体の「社主」個人を被告に請求していた事件で、東京地裁は法人格否認の法理を適用し、両被告に退職金等のほぼ全額の支払いを命じた。 この企業グループでは、社主が業務全般にわたって唯一絶対の権限を持っており、各子会杜の社長や取締役の任命、その給料の査定のほか、各子会社の末端の平社員の昇格・昇給、賞与決定などさえ社主の決済が必要であった。 また、子会社はグループの財務本部に預金通帳を取り上げられ、子会社には常時20万円くらいのお金しかなく、一定額以上の支出は社上の決済が必要とされた。こうしたことから判決は、この企業グループの子会社は社主によって直接自己の意のままに自由に支配・操作されていたのだから、株式会社としての実体は形骸化しており、親会社や社主個人に支払義務を免れさせることは許されないとした。 企業組織再編大流行の中、赤字子会社という「泥船」に転籍させられ、退職金も未払のまま泣き寝入りさせられる事例も今後増えると予想されるが、そうした責任逃れは許さないと断じた画期的な判決である。 |
||||
| 山内 一浩 | ||||
■厚生省の元課長、薬害エイズ事件で一部有罪 |
||||
| 薬害エイズ事件が起きたのは、1980年代のことでした。この当時の厚生省担当課の課長が松村明仁氏です。松村氏は「関係部局と適時適切に協議するなどして、危険な非加熱製剤が患者に投与されないよう対処すべきだった」「この義務を尽くさなかったため、二人の被害者にHIV(いわゆるエイズウィルス)を感染させ、死亡させた」として、業務上過失致死の罪に問われていたところ、2001年9月28日、東京地方裁判所刑事第10部で判決が下されました。二人の被害者のうち、1985年5月頃に感染した被害者については無罪、1986年1月頃に感染した被害者については有罪とし、禁固1年(執行猶予2年)の刑を言い渡したのです。 官僚の不作為の責任が問われた、日本で初めての刑事裁判であり、官僚はこの判決の意義を深く受けとめ、官僚体質を改めるべきでしょう。その意味では評価できる判決でしたが、被害者の一人につき無罪としたことは間違いでした。その被害者のお母さんはこう言っています。「国民の生命を守る立場にある厚生省が、危険と知りつつ、みすみす、エイズになるかもしれない製剤の販売や使用を放置するなどあり得ないと思っていました」。裁判所にはお母さんの声が届かなかったのでしょうか。 この事件は控訴され、東京高等裁判所で争われることとなりました。 |
||||
| 石井 麦生 | ||||
■「商品先物取引事件」で逆転勝訴判決 |
||||
| 1.昨年10月10日、東京高裁第15民事部は、商品先物取引(注:将来の一定時期に物の受け渡しをすることを約束してその価額を現時点で決める取引)事件について、被害者の原告の請求を棄却した新潟地裁長岡支部の判決を変更し、控訴人(原告)が被った損害の7割(弁護士費用を含めて約2,280万円)の請求を認める逆転勝訴の判決を言い渡した。 2.本件の事実関係は、片田舎で板金加工業を営んでいたW(原告)が、商品先物取引の知識・経験がまったくなかったにもかかわらず、知人のKから誘われて、Kを介して平成8年3月にM社(担当外務員は0)と商品先物取引を締結し取引を開始したが、その後の取引は0に一任し、0の言うままにM社に委託証拠金を支払い続け、取引を終了した平成9年5月の時点では約2,970万円の損害を被ったため、M社らを被告にして裁判所に損害賠償請求の訴えを提起したものである。 3.一審の裁判所は、Wは商品先物取引の知識・経験を有するKを代行者として取引をしたのであるから、M社らに違法性はないとしてW(原告)の請求を棄却した。しかし、東京高裁は、M社らが主張したKの借名取引かKを代行者とする取引であるとする主張を排斥し、M社側には、Wに対し断定的判断の提供・無意味不合理取引の過当取引の違法行為があり、これらの行為は信義則上の注意義務に違反するから不法行為が成立する(但し、Wに3割の過失がある)、としてWの主張を認める内容に一審判決を変更したものである。 4.私は、他の事務所のS弁護士と共に高裁段階から本件事件を受任して、裁判宮の心を動かす書面の作成等に苦労してきたが、幸いにして一審判決を変更する逆転勝訴の判決を取ることができ、消費者被害の救済に資することができた。弁護士冥利に尽きるといえるが、M社らが上告したため、油断はできない。 |
||||
| 清水 洋二 | ||||
〜法律相談〜 ドメスティック・バイオレンス |
||||
| Q. 最近、夫婦間の家庭内暴力を対象としたドメスティック・バイオレンス(DV)法ができたと聞きましたが、どういう法律か教えてください。 | ||||
| A. 正式には「配偶者からの暴力の阻止及び被害者の保護に関する法律」と言います。 2001年10月13日から施行されました。その主な内容は、配偶者からの暴力で被害を受けている者を保護・支援する施設(「配偶者暴カ相談支援センター」)を新設するとともに、申し立てにより裁判所が暴カを振るう配偶者に保護命令(接近禁止、退去)を出し、これに従わなかった場合は刑罰を課すというものです。刑事罰を課したところに大きな意義があります。@対象となるのは「配偶者からの」暴カです。「配偶者」には婚姻している者だけではなく、内縁関係のような事実上婚姻関係と同様の場合も含みます。恋人や他人は対象となりませんが、ストー力一行為規制法で規制の対象となる可能性はあります。A「暴カ」とは、「身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの」とされています。B保護の内容は、被害の発見者の支援センターや警察への通報義務、支援センターによる保護、警察宮による被害防止措置ですが、最も重要なのは裁判所による保護命令です。保護命令は「6ヵ月間の被害者への接近禁止」と「2週問の住居からの退去」の2種類あります。前者は別居中の場合、後者は同居中の場合です。保護命令に違反した場合は懲役1年以下または100万円以下の罰金となります。申し立ては被害者の住所地の地方裁判所です。 法律では保護命令は「速やかに」出すとされていますが、東京地裁の場合申立から命令まで8〜10日(事案によっては申立人の面接だけで直ちに発令されることもある)とされています。なお、支援センターの設置は平成14年4月1日からとなっています。 |
||||
| 野澤 裕昭 | ||||
■ぶらりらくちょう − 首かけ銀杏 |
||||
| 日比谷公園のなかにある「松本楼」のとなりに大きな銀杏の木があります。「首かけ銀杏」と名づけられており、要旨次のような説明書が付けられています。「この銀杏は日比谷見附にありましたが、道路拡張のため伐採されることとなりました。これを知って驚いた日比谷公園生みの親、本多博士は当時の東京行政院院長の星亨に面会を求め、日比谷公園への移植を願い出ました。移植不可能とされていたものを本多博士は『首にかけても移植する』と述べて、成功させました。それで『首かけ銀杏』と名づけられました」 これを読んだときは、銀杏を助けようとした博士の必死さと、後年それが結果として残っていることにある種の感慨をおぼえました。裁判所の行き帰りにときどき傍を通ります。 |
||||
| 今村 核 | ||||
■新・くらしの法律相談ハンドブック |
||||
| 白由法曹団編『新・くらしの法律相談ハンドブック』(旬報社)が発売され、当事務所からも4名の弁護士が執筆に参加しています。 この本は旧著の新訂版で、収録されたケースは600例にも及び、民事、家事、労働、社会保障、行政、刑事等、私たちが日常関わりを持ち得る殆どの分野が取り上げられています。 編集・執筆を担当した自由法曹団は、今年80周年を迎えた法律家の団体ですが、国民の暮らしと権利、日本の平和と民主主義を守るために精力的な活動を行ってきました。そうした日常的な活動の経験を踏まえ、市民の立場、弱者の立場から「どう解決したら良いか」、「弁護士とどのように相談をしたら良いか」といった実践的な内容となっています。また、様々な書式や図表も挿入されており、Q&A方式でよりわかり易い構成となっています。ちょっと困ったことがあったら手にとって見てみる、そんな身近な相談相手として活用していただければと思います。定価は5,250円(税込)で一般書店で販売されていますが当事務所宛にご注文いただければ割引もあります。詳しくは事務所宛にお尋ねください。 |
||||
| 宮坂 浩 | ||||
| 戦争がとても近くに感じられた昨年、子どもの頃に夢見ごこちで思い描いていた21世紀とは、あまりにもかけ離れた現実でした。平和を願う気持ちよりも、日常生活の更なる便利さを願う気持ちだけが先行しているような日本。 21世紀も2年目。“平和ボケ”していた自分に喝を入れて、この1年を大切に過ごしたいと思います。(山崎) |
||||
| Topへ |
| CopyRight(c) 2006 Junpoh Law Office, All rights reserved. |
